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外国人解雇トラブル

外国人解雇トラブル

「解雇をした外国人従業員から突然訴えられてしまった」
「雇用していた外国人が在留資格を更新できなかった」

解雇とは使用者による労働者の契約解消のことですが、現在の日本の労働法制では、労働者を解雇するのは難しいといえます。仕事ができない社員や勤務態度が悪い社員であっても、簡単に解雇をすることはできません。

安易に解雇をしてしまうと、従業員から訴えられ損害賠償請求をされてしまったり、会社の内部情報を労働基準署に垂れ込まれてしまったり、場合によっては、企業活動や外国人雇用の一定期間停止することも考えられます。

「外国人労働者の解雇が認められるためには

解雇事由は、「客観的に合理性」があり、「社会通念上相当」であることが必要です。
従来、判例では、使用者による労働者の解雇について、「客観的合理性」「社会通念上の相当性」という要件が必要であると判示し、解雇を制限してきました。そして、この裁判例は平成19年3月1日に施行された労働契約法において、次のように明文化されました。
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」(労契法16条)
そのため、解雇においてはこの要件を満たす必要があります。

(1)「客観的に合理的な理由」

例えば、傷病等による労働能力の喪失や低下、能力不足や適格性の欠如、非違行為、使用者の業績悪化等の経営上の理由による解雇等があります。

(2)「社会通念上の相当性」

その事実関係の下で労働者を解雇することが過酷に過ぎないか等を具体的な個々のケースに応じて判断します。
労働契約期間を決めて雇用したいわゆる契約社員の場合は、原則として、その契約期間においては解雇できません。
例外として、「やむを得ない事由」が必要となります(労契法17条)。すなわち、期間満了を待つことなく直ちに雇用を終了せざるを得ないような特別の重大な事由が必要となります(福岡高決平14.9.18)。

解雇が認められる客観的で合理的な理由は、下記のようなものです。

  • 事業場内外における盗取、横領、傷害等刑法犯に該当する行為のあったこと

  • 賭博、風紀紊乱等により職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ほすこと

  • 雇入れの際の採用条件の要素となるような経歴を詐称したこと

  • 使用者の行う調査に対し不採用の原因となるような経歴を詐称した場合

  • 正当な理由なく無断欠勤し出勤の督促に応じない場合等

  • 傷病により労務を提供できないこと

  • 勤務態度の不良により、会社の指示に従って労務を提供できないこと

  • 労働契約の目的を達成できないこと etc…

また、外国人労働者を解雇する場合、上記理由が認められた上で、労働基準法第3条に基づく「差別的解雇」に該当しないかどうかに注意をする必要があります。

差別的解雇とは

差別的解雇とは、労働基準法第3条において、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」と定めるもので、解雇や解雇に至るような待遇を外国人に対して行ってはいけないことを定めています。

例えば、「日本語能力が劣り、コミュニケーションが十分にできず、労働契約の目的を達成できないこと」を理由に解雇する場合、外国人が日本人と比べ、日本語能力に劣ることはやむを得ないことであり、その事情は使用者も理解していなかったのかが、解雇が不当か正当かを判断する要素となります。仮に、外国人労働者の側から解雇無効を訴えられた場合、その解雇を正統とするためには、採用条件で、日本語能力が十分であることを要求していたか等、幅広い事情が考慮されるでしょう。

在留資格の更新と解雇との関係

また、外国人従業員が在留資格を更新できなかった場合(不法就労の状態)は、そのまま、就労させてしまうと不法就労助長罪に問われることになりますが、同時にこれが解雇する上で「客観的に合理的な理由」に該当すると考えられます。ただし、使用者として、労働者の不法就労について把握していたのか等、使用者側からの一方的な解雇通告のみで完結するものではないことも、注意が必要です。

申告内容に虚偽がないことの宣誓書を取得したり、虚偽が発覚した場合には即刻解雇といった契約書の作成を事前にしておくのが望ましいでしょう。

弁護士に依頼をすることで、解雇事由に客観性が認められるか、手続きに正当性はあるかについてアドバイスをすることができますので、お気軽にご相談ください。また、解雇は非常に思い法的手続きとなり、解雇にあたりトラブル化することも多くあります。トラブルを避け、スムーズな解雇手続きを実現するためにも、まずは弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

【参考文献】
外国人の雇用に関するトラブル予防Q&A
外国人雇用の実務 第2版