平成 31 年 4 月から,新設された在留資格の特定技能1号の導入が始まっています。
建設業における特定技能外国人の雇用については,独自の取り決めがあるため,受入れをご検討されている方は注意が必要です。
ここでは建設業において,外国人が特定技能の在留資格で就労するために必要な試験や,企業側が特定技能外国人を受入れるために準備すべきことについてご説明します。
【建設業における特定技能1号外国人の就労対象職種】
①型枠施行,②左官,③コンクリート圧送,④建設機械施工,⑤屋根ふき,⑥鉄筋施行,⑦内装仕上げ・表装,⑧トンネル推進工,⑨土木,⑩電気通信,⑪鉄筋継手
このうち,①~⑦の職種は技能実習2号移行対象職種であり,技能実習2号を修了していれば,特定技能試験が免除され,無試験で特定技能1号の在留資格を取得することができると同時に,一時帰国しなくても在留資格の変更手続きをすることができます。
【特定技能の在留資格取得に必要な試験合格基準】
1.日本語試験及び技能評価試験
①「日本語能力試験(N4)」または「日本語基礎テスト」に合格すること
②「建設分野特定技能評価試験」または「対象職種に関する技能検定試験」に合格すること
技能実習2号移行対象職種の7職種については,「建設分野1号技能評価試験」または,「技能検定3級試験」に合格することが必要です。
技能実習2号移行対象ではない,トンネル推進工,土木,電気通信,鉄筋継手については,建設分野1号技能評価試験に合格することが必要です。
2.技能実習2号修了者は試験免除
技能実習2号を良好に修了した外国人は、①,②の試験が免除され,無試験で特定技能1号の在留資格を取得することができます。
ただし,技能実習2号から特定技能へ移行対象職種に該当している必要がありますので,詳しくは次の図1をご確認ください。
図1 特定技能の業務区分と技能実習2号移行対象職種の対応関係
業務区分 | 技能実習2号移行対象職種 | 技能の根幹となる部分の関連性 | |
---|---|---|---|
職種 | 作業 | ||
型枠施工 | 型枠施工 | 型枠工事作業 | コンクリートを打ち込む型枠の組立て等の作業,安全衛生等の点で関連性が認められる。 |
左官 | 左官 | 左官作業 | 塗り作業,安全衛生等の点で関連性が認められる。 |
コンクリート圧送 | コンクリート圧送 | コンクリート圧送工事作業 | コンクリート等をコンクリートポンプを用いて構造物の所定の型枠内等に圧送・配分する作業,安全衛生等の点で関連性が認められる。 |
建設機械施工 | 建設機械施工 | 押土・整地作業 | 建設機械の操作・点検,安全衛生等の点で関連性が認められる。 |
積み込み作業 | |||
掘削作業 | |||
締固め作業 | |||
屋根ふき | かわらぶき | かわらぶき作業 | 瓦等の材料を用いて屋根をふく作業,安全衛生等の点で関連性が認められる。 |
鉄筋施工 | 鉄筋施工 | 鉄筋組立て作業 | 鉄筋加工・組立ての作業,安全衛生等の点で関連性が認められる。 |
内装仕上げ | 内装仕上げ施工 | プラスチック系床仕上げ工事作業 | 張付け作業,安全衛生等の点で関連性が認められる。 |
カーペット系床仕上げ工事作業 | |||
鋼製下地工事作業 | |||
ボード仕上げ工事作業 | |||
カーテン工事作業 | |||
表装 | 表装 | 壁装作業 |
参考:建設分野の外国人材受入れガイドブック 2019 より
【特定技能外国人を受入れるために準備すること】
建設業で特定技能外国人を雇う場合には,以下のような準備や申請等が必要です。
①従事してもらう業務が特定技能の対象職種に含まれているか確認する。
なお対象の業務に関係する建設業者団体は次の図2のとおりです。
図2 建設分野における特定技能の対象業務と関係建設業者団体(2019 年 4 月時点)
技能 | 関係建設業者団体 | |
---|---|---|
1 | 型枠施工 | (一社)日本型枠工事業協会 |
2 | 左官 | (一社)日本左官業組合連合会 |
3 | コンクリート圧送 | (一社)全国コンクリート圧送事業団体連合会 |
4 | トンネル推進工(新規) | (公社)日本推進技術協会 |
5 | 建設機械施工 | (一社)日本機械土木協会 日本発破工事協会 (一社)全国基礎工事業団体連合会 (一社)日本建設機械レンタル協会 (一社)日本基礎建設協会 |
6 | 土木(新規) | (一社)日本機械土木工協会 (一社)日本建設躯体工事業団体連合会 |
7 | 屋根ふき | (一社)全日本瓦工事業連盟 |
8 | 電気通信(新規) | (一社)情報通信エンジニアリング協会 |
9 | 鉄筋施工 | (公社)全国鉄筋工事業協会 |
10 | 鉄筋継手(新規) | 全国圧接業協同組合連合会 |
11 12 |
内装仕上げ 表装 |
(一社)全国建設室内工事業協会 日本室内装飾事業協同組合連合会 日本建設インテリア事業協同組合連合会 |
参考:建設分野の外国人材受入れガイドブック 2019 より
②「a:一般社団法人建設技能人材機構の正会員である建設業者団体に所属」するか,「b:建設技能人材機構に賛助会員として所属」する。
この機構は,建設業界共通ルールである行動規範を定め,これを機構の会員である受入企業に遵守させるとともに,関係業界団体が協力して特定技能外国人の受入事業を行うことを目的に設立されました。
建設業においては,一般の民間の有料職業紹介事業者による職業紹介を行うことが禁止されているため,機構では傘下の会員である受入企業や傘下の団体の会員である受入企業に対して,職業紹介事業を行うこととしています。
詳しくは https://jac-skill.or.jp/(建設技能人材機構 HP よりご確認ください。)
③受入企業は,雇用したい外国人に対し,雇用契約の重要事項を母国語で説明する。
雇用契約については,受入機関が外国人と結ぶ雇用契約が満たすべき基準と,受入機関自体が満たすべき基準があります。
<受入機関が外国人と結ぶ雇用契約が満たすべき基準>
報酬額が日本人が従事する場合の額と同等以上であること。
一時帰国を希望した場合,休暇を取得させるものとしていること。
外国人が帰国旅費を負担できないときは,受入機関が負担するとともに,契約終了後の出国が円滑になされる措置を説明することとしていることなど。
1号特定外国人の受入計画について,その内容が適当である旨の国土交通大臣の認定を受けていること。(※)
認定を受けた建設特定技能受入計画を適正に実施し,国土交通大臣または,適正就労監理機関により,その旨の確認を受けること。(適正就労監理機関とは,国土交通省が適正な就労環境を確保するための業務を行う能力を有すると認めた者のこと。受入企業や外国人を直接巡回訪問し,賃金や就労環境などをチェックしたり,母国語相談窓口を開設して相談,苦情対応を行う)(※)
国土交通省が行う調査または指導に対し,必要な協力を行うこと。(※)
(※)に関しては,建設業独自の基準となっています。
<受入機関自体が満たすべき基準>
労働,社会保険および租税に関する法令を遵守していること。
特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと。
行方不明者を発生させていないこと。
欠格事由(前科,暴力団関係,不正行為など)に該当しないこと。
保証金を徴収するなどの悪質な紹介業者などの介在がないこと。
報酬を預貯金口座への振込などにより支払うこと。
中長期在留者の受け入れを適正に行った実績があることや,中長期在留者の生活相談などに従事した経験がある職員が在籍していることなど(*)
外国人が十分に理解することができる言語で支援を実施することができる体制があること。(*)
支援責任者などが欠格事由に該当しないこと。(*)
など。
(*)については,登録支援機関に支援を委託する場合は不要。
④建設キャリアアップシステムに事業者登録をする。
建設キャリアアップシステムとは,建設業における,技能や経験,マネジメント能力を客観的に証明するための基準やルールを電子的に見える化することで,技能と経験に応じた処遇を実現するためのシステムです。
本システムの導入をすることにより,日本人と外国人の「同一技術同一賃金」を実現し,外国人だから安い賃金でいいとか,日本人なのに外国人より安い賃金はおかしい,などといった誤った認識が生じないための取り組みが始まっています。
⑤受入企業は,国土交通省に「建設特定技能受入計画」の認定申請し,「認定証の交付」を受ける。
建設特定技能受入計画が認定されるためには,建設業法3条の許可を受けていることや,建設キャリアアップシステムに登録していることなどの認定要件があります。
この受入計画の認定がなされた後も,計画の実施状況が適正に履行されている必要があります。認定要件に適合しなくなった時や,計画が適正に実施されていない時,不正の手段により認定を受けた時,国土交通省に対して適切に報告をせず虚偽の報告をした時には,認定の取り消しが行われることがあります。
⑥地方出入国在留管理局に,⑤で取得した国土交通大臣の認定証を付して,在留資格特定技能への変更を申請し,在留カードを交付してもらう。
この在留資格の申請においては,現在日本で中長期在留中の外国人を雇用する場合は,本人が申請を行い,海外在留者を雇用する場合は,受入企業が申請を行う必要があります。
上記①~⑥の準備以外にも,雇い入れる方法次第では,他にも追加される準備があります。
建設業における特定技能外国人の雇用をお考えの方は,外国人雇用に精通した専門家にご相談ください。
【参考文献】
建設分野の外国人材受入れガイドブック 2019