宿泊業における特定技能外国人の雇用について,宿泊業特定技能の在留資格を取得するための基準や,受入企業が準備しておくべきことについてお伝えします。
日本の宿泊業,飲食サービス業における離職率は,平成30年上半期が14.7%,令和元年上半期が17.7%となっており,もともと離職率が高い業界とされていましたが,近年はますます人手不足が深刻化される業界と言っても過言ではありません(下記表1 付属統計表2 産業別入職・離職状況 参照)。
改正された出入国管理法が施行される以前より,外国人労働者が宿泊施設などで働いている姿を目にする機会は多かったかとは思いますが,彼らのほとんどは留学生のアルバイトと言われていました。
ホテルの通訳やフロント対応として外国人を雇用するのであれば,「技術・人文知識・国際業務」という在留資格がございますが,レストランでの食事の配膳や,部屋の掃除などの単純作業をするには,就労制限のない身分系在留資格(日本人の配偶者,永住者など)の外国人しか基本的には雇えませんでした。
そのような中,改正出入国管理法が平成31年4月に施行されて,新しい在留資格である「特定技能」により,レストランでの食事の配膳や,部屋の掃除などの単純作業のために外国人を雇用することが出来るようになりました。
東京オリンピックの開催による外国人観光客の増加も見込まれていることも含め,2030年には,現在の2倍にあたる約8万5千人の外国人労働者が宿泊業において必要になると考えられています。
これらのことを踏まえて,今後は,新たな在留資格「特定技能」での宿泊業における外国人雇用が活発になることが見込まれます。
表1
労働省HPより(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/20-1/index.html)
宿泊業において特定技能外国人が従事することができる業務内容は,宿泊施設におけるフロント,企画・広報,接客およびレストランサービスなどの宿泊サービスの提供に係る業務とされています。
【宿泊業特定技能の在留資格を取得するための試験】
<技能試験>
「宿泊業技能測定試験」
試験言語:日本語
実施主体:一般社団法人 宿泊業技能試験センター(https://caipt.or.jp/)
実施補法:筆記試験および実技試験
※具体的な試験内容などについては,実施主体HPでご確認ください。
※国内で試験を行う場合,①退学・除籍処分となった「留学生」,②失踪した「技能実習生」,③在留資格「特定活動(難民認定申請)」により在留する者,④在留資格「技能実習」による実習中の者については,その在留資格の性格上,試験の受験資格を認めない。
<日本語試験> ※次のいずれかの試験に合格すること
(1)「国際交流基金日本語基礎テスト」
実施主体:独立行政法人国際交流基金
実施方法:CBT(コンピューター・ベースド・テスティング)方式
(2)「日本語能力試験(N4以上)」
実施主体:独立行政法人国際交流基金および公益財団法人日本国際教育支援協会
実施方法:マークシート方式
<技能実習2号を良好に修了した者の日本語能力の評価>
職種・作業の種類に関わらず,第2号技能実習を良好に修了した者については,技能実習生として良好に3年程度日本で生活したことにより,ある程度日常会話ができ,生活に支障がない程度の日本語能力水準を有する者と評価し,日本語試験が免除されます。
【特定技能外国人を受入れるために企業が準備しておくべきこと】
特定技能外国人を受入れる「特定技能所属機関」は,下記の準備が必要です。
旅館・ホテル営業の許可を受けて旅館業を営んでおり,風俗営業法第2条6項4号に規定する施設(ラブホテルなど)に該当しないものであること。
特定技能外国人に対して風俗営業法第2条3項に規定する「接待」を行わせてはなりません。
初めて宿泊分野の特定技能外国人を受入れる場合には,当該特定技能外国人の入国後4カ月以内に,国土交通省が設置する宿泊分野に係る特定技能外国人の受入れに関する協議会に加入し,加入後は協議会のほか,国土交通省が行う調査又は指導に対し,必要な協力を行うなどしなければなりません。
入国後4カ月以内に協議会に加入していない場合には,特定技能外国人の受入れができないこととなります。
協議会に対し,必要な協力を行わない場合には,特定技能外国人の受入れができないこととなります。
特定技能所属機関が1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を登録支援機関に委託する場合には,当該登録支援機関は,宿泊分野にかかる特定技能外国人の受入れに関する協議会に参加し,加入後は協議会のほか,国土交通省が行う調査または指導に対し,必要な協力を行うものでなければばりません。
※1号特定技能外国人を受け入れるにあたっては,当該外国人は労働者派遣によるものであってはならず,1号特定技能外国人を派遣することも派遣された者を受け入れることもできません。
※1号特定技能を派遣し,または派遣された者を受け入れた場合には,入国・在留諸申請において不正に許可を受けさせる目的での虚偽文書の行使等に該当し,出入国に関する法令に関し不正または著しく不当な行為を行ったものとして,以降5年間は,特定技能外国人の受け入れが出来ないこととなります。
宿泊業における特定技能外国人の受入れについては,精通した専門家にご相談ください。